ギターに自然な広い奥行きを!?○○テクニック!


-導入-

少し間が空いてしまいましたが、6回目の更新となる今回もバッキングで有効なアプローチを紹介します。
何度か書きましたが、現代音楽(特にロック等)では両サイド、または片方、にバッキングギターが配置されている状況がほぼ定石であるように思えます。
今回はそんなギターのステレオ感に関しての記事です。

こんな方におススメ

  • ギターをサイドに振ったときに圧迫感がある、ベタっとしている
  • バッキング同士のスカスカ感、隙間が気になる
  • ドラムやベースと離れてる気がする、馴染まないが、パンの位置は変えたくない
  • 全体に空気感がほしい
  • ギターをもっと広く聞かせたい、すこし厚みが欲しい

などなど、両サイドにありかつメインの役割をする音楽を製作する時には特に気になる部分かと思います。
そこで今回は少し聞きなれない言葉かと思いますが、

ボルテックスマイクテクニック

(Vortex mic technique, The Vortex)

という手法を取り入れていきます。
以下で説明していきたいと思います。


-ボルテックスマイクテクニックとは?-

ボルテックスマイクテクニック(Vortex mic techniqueまたはThe Vortex)とはかなり簡潔に説明すると、
ギターを録る際にもドラムのようにルームマイクを設置して混ぜていく、というアプローチのことです。

文字だけではどのような効果が得られるか分からないので、ひとまずこちらを

こちらの動画はボルテックステクニックをTorpedoのキャビシミュを使って再現したものです。
文字通り

  • Fullの時、ルームマイクがガッツリなっている状態
  • Halfが半分
  • Removedが無し

の音です。個人的にはFullだと少しやりすぎな印象ですが、Removedはステレオ感はあるものの若干の物足りなさと隙間を感じます。
※この辺は好みの問題です

ではこの手法はどういったものかといいますと、
メインの音を左右どちらかに100%パンを振り、その反対側にルームマイクの音を100%で振る
という手法です。
上の動画内でTorpedoを使って説明していますので、少しみていきます。

〈工程〉

  • まずメインの音を通常通り作る。ここでは王道に二種類のマイクを組み合わせて一つの音を作っている
  • メインはどちらか一方にパンフリをする
  • 次にルームマイクをDistance(距離値)を最大の物と60%のものを用意する
  • それらをメインと反対側に振る(例:メインが左であればルームは右)
  • 結果がこちら

ルームマイクに引っ張られて一つのトラックが若干真ん中よりに聞こえる感じですね。

このルームマイクを使う手法はChris Tsangaridesという70-00年代あたりに大活躍したエンジニアが考案したマイキングテクニックで
自然な音、ラウド感を得られることからすぐに広まったそうです。
有名なのはおそらくJudas PriestのPainkillerですが他にも、インギーやゲイリームーアのプロデューサー、Angra、Helloweenなどなど
メタル、ハードロックブーム一時代を支えていたような人です。

参考にドが付く名盤Juas PriestのPainkiller音源を張っておきます。

今回久しぶりに聞きましたが、確かに音は古いんですがやっぱりめちゃめちゃいい音しているなと改めて驚かされました。
MegadethのRust in PeaceやExtremeのPornografitti、ObituaryのCause of Death、PanteraのCowboys from hellなんかも同時期あたりに録音、リリースされてますが、
Painkillerのギターは抜群に空気感と広がりがあり、より現代的だと思いました。
今では「ギターにルームマイクを置く」と聞くと別段びっくりするほどの事でもなく、ほぼ当たり前のように行われている箇所もあると思いますが、
当時はかなり革新的だったのかなと思います。

少し詳細を付け加えておきますと、こちらのインタビューでは、
1977年のBrand Xのアルバム「Moroccan Roll」製作中にギタリストに「とにかくヘヴィでラウドなものにしてくれ!」といわれたものの
彼の機材はFenderにマーシャルというものだったらしく試行錯誤を繰り返し、ルームマイクやクローズマイクを調整しているときに偶然発見したようです。

その後も試行錯誤の末、「ジャンルにも寄り蹴りだが、ルームマイクは30フィート(9.5mほど)と15フィート(4.2mほど)が良い
と述べています。SoundonSoundの記事からの引用らしいです。


-実例-

今回はTorpedoを持っていないので、全編BIAS desktopを使ってやってみました。
DIは今回も使いまわしで申し訳ないのですが、EPの<defunct>からコーラスパートのバッキングを持ってきました。

収録時は別のアンシミュとIRを使用していたので1からBIASで音つくりをしなおしました。

そのほかの使用機材などに関しましては、第一回をご参照ください
第一回:ハイゲインでも分離よく!-激しい歪みには○○を!-

ではまず普通にメインの音作りをします、今回はBIASを二つ立ち上げ57と414の音を混ぜて作っていきました。
それらを混ぜて軽くEQで調整しメインに関しては以上です

素の状態パン100%

次にルームです
このようにアンプ設定は何も変えずにマイクがなるべく遠ざかるようにしました。

このセッティングの音を混ぜていきます。
メインと互いに正反対に置き動画を参考に-8dbしたのが、こちらの音源です。

ボルテックス-8db

どうでしょうか?
ステレオ感という意味では無しの方がワイドですが、奥行きという面ではルームを使ったボルテックスが勝っているように見えます。

ちなみに動画同様にボルテックスを半分(-16db)にしたものがこちらです。

ワイド感がありつつ、奥行き、隙間を埋め、張り付いたような印象は薄れているかと思います
このアプローチを聞いた後に素の状態を聞くと若干耳に張り付く感じがするかなと思います。
良くも悪くも素の物は二次元的に広い、ワイドな印象で
ボルテックス側は三次元的立体感があると思いました。

ちなみに「そんなことをしなくてもパンを80~90%にすれば反対側へ音が漏れて同じ効果が得られるのでは?」
と思う方もいると思い実験してみました。

素のメインをパンを85%振ったもの

べた付き感は抑えられるものやはり奥行きを得ることは少し難しいかなという印象でした。
ちなみに僕はいつもこの位の値でやっていました。

最後に全体的に差が分かりにくいかと重い1ループずつつなげた音源も用意しました。

※繋ぎ目ですこしクリップしてしまっています
パン100%⇒パン85%⇒Vortex-8db⇒-16db

今回はBiasを使いましたが次回以降にに別の方法でどう音が変化するかをまとめてみたいと思います。
個人的には今回の場合-15dbくらいがちょうどよく感じました。
Vortexの音量はVCSフェーダーやリンクさせて調整していくのがやりやすいと思います。


-位相について-

毎度の如く今回も位相問題がついてまわるのですが、今回限り僕自身もよくわかっていないというのが正直なところです。
というのも、最初に上げたSpectreSoundStudiosのDust Devil Effectの動画では
「本来位相に気をつけなければいけないのがボルテックスの難しい所だ」
と述べているのに対し、
「ボルテックスは位相の打ち消しを使い、自分の好きな周波数をよりラウドに聞かせることもできる」
「リードでこの手法を使うと位相により、右左どちらからも鳴っている風にも聞こえるようになる」
と述べている動画があったりするので、エンジニアではない自分にはもうこんがらがってお手上げです。

自分の中では、
「ルームマイクというのは位相の違いやレイテンシーがあって当然であり、人の耳はそれを空間と捕らえる。
なので気にし過ぎず気に入った音が出るものを選べばよい」
という風に解釈しましたが、本当に合っているのかといわれると自信がありません。

実例では、書き出したところ位相はすべてきっちり合っていたので特にずらしたりはせずに進めました。


-まとめ-

以上がボルテックスマイクテクニックについてでした。
今回はBiasを用いた方法でしたが、次回にまとめ切れなかった別の方法を検証、まとめたいと思います。
ギターでのルームマイクの使い方がいまいちしっくり来ていなかった自分としては
大分スッキリすることができました。

しかし今回題材としたボルテックスマイクテクニック、
日本語はおろか英語も検索してもあまり資料や検証が出てこないので、個人的にもかなりあやふやな部分があり困っている、というのが率直なところです。
何か知っている方、意見がある方がいたらコメント欄やお問い合わせまで宜しくお願いします。
個人の感想ですが、恐らく「一方にメインの音を音を置き、反対側にルームを置く」というそれ以上でも以下でもない、
という事なのだと思います。実際にスタジオでやるとなると位相問題や部屋の大きさなどなど、結構大変らしいです。
簡単な一文で理解も容易ですが、割合、距離、マイクの種類などほぼ無限に組み合わせが存在するので、
まず適当に試してみて、自分にあった音や組み合わせを探していくのがやはりベストかなと思います。
人によっては真ん中がスッキリしている方が良いと思う人も多々いると思うので、ルームマイクなんていらない事もあると思います。
近年の録音状況の向上で両サイドに振っても厚みや空気感が得られるようになり、少し廃れつつあるアプローチかもしれませんが、個人的には結構好みな印象でした。

P.S.めちゃくちゃ話逸れてしまうんですが1990年リリースのメタルは名盤ぞろいで驚きました

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