ハイゲインでも分離よく!-激しい歪みには○○を!-

–導入–

第一回目の更新となる今回はハイゲインの音作り(かなり深く歪んだディストーションサウンド)、特にバッキングで有効なアプローチを紹介します。

[こんな方におススメ]

  • ハイゲインの音がどうしてものっぺりとしてしまい気になる
  • もっとゲインを稼ぎたいけど潰れてコードの分離感が無くなる、またはアタックが丸くなるのがネック
  • ローや倍音が欲しいので仕方なくゲインを稼ぐ
  • ゲインを上げたいが潰れてしまう、抜けが悪くなるのが気になる
  • ストロークがはっきりしないのが気になる
    などなど

近年の所謂「いいハイゲイン、歪」という話題のときにほぼ確実に上がるのが、
ゲインを上げてもコード感がある!分離がいい!埋もれない!モコモコしないローが出る!耳に痛くない!粒立ちがいい!抜けがいい!etc
というようなことをよく耳にすると思います。
特にDjent(ジェント)の登場やハードコアの複雑化等により、テクニカルなフレーズ、テンションが入ったコードがロック、メタルではどんどん取り入れられています。

そういった中で手持ちの機材ではうまくいかなくなっている方には特におススメです。

ロック、メタルのみならず、ポップスや激しめのクラブ音楽でもハイゲインギターのバッキングはよく聞かれるようになってきています。
今回はそんな音へのアプローチのご紹介です。

では何を混ぜるといいか?それは

クリーンです。


–クリーンを混ぜるってどういうこと?–

前置きが長くなりましたが、まずはこちらの動画から
Jason richardsonの1stアルバムでのミックスについての動画です。

まず再生すると、一つのバッキングが三つの音から成り立っている事が解説されています。

  • モダンなハイゲイン
  • 少しゲインが下げめのマーシャルっぽい音
  • クリーン(若干クランチっぽい)

この動画ではAxeFxのライン録りと同時にDIを録る機能を使って複数生成したものを使用しているようです。
これを再現してしまおうというのが今回のお話です。

このアルバムは上に書いたモダンメタルの教科書のようで、速引きなどテクニカルな要素満載です。
それでいて音も一切崩れることなく無理のない分離、粒立ちのよさが気持ちいいくらいにカッコイイです。
Taylor Larson氏はPeripheryやVeil of Maya等々でも活躍しているエンジニアですので、興味のある方はこの動画やほかの動画も漁ってみるといいかも知れません。

では何故クリーン/クランチなのか?違うマイクや位置、キャビネットを混ぜれば良いだけの話では?と思う方もいると思います。
個人的見解ですが以下がクリーンやクランチがハイゲインより有利な点です

  • アタックが早い、分かりやすい
  • 文字通りローがクリーン
  • 粒立ちがしっかりしている(潰れていない)
  • ハイがくっきりしているのでコード感、分離も良い、抜けてくる

音作りや録音状況にもよりますので一概には言えませんが、これらでハイゲインの問題点を補えると考えた訳です。
さらに平面的なハイゲインとアタック感のあるクリーンを混ぜることで立体感も得られると思います。
動画ではLarson氏はピッキングのアタックを出すためであると軽く触れています。
Djentのような極力歪ませたいがアタック感も捨てたくない音作りには最適なのだと思います。


–実際に取り入れる–

今回はソフトアンプシミュレータの使用を前提に進めて行きたいと思います。
アンプからマイク録りや外部のアンシミュの方はDI box等をつかってメインを録音しながらDIもDAWに保存していきましょう。
録り始めは何も気にせず全てのバッキングを録ってください。出来上がったメインのDIトラックをコピーして最低2つ用意します。
一つはメインのハイゲイントラック、もう一つがクリーン用となります。
ハイゲインの方はお好きなように音作りをしてかまいません。
ゲインを下げれば良いクリーンになるようであればそれでも構いませんし、根っこからガラッと変えてしまっても問題ありません。
こんなクリーンの音作りをしたことがないから基準がわからないという方は、メインを鳴らしながらクリーン側のアンプ、歪の設定を弄っていき
自分が欲しい効果を得らえれ且つ自然に聞こえる箇所を探っていくのが良いと思います。

次に混ぜるときの音量差ですが、結論から言うと個人の好き好きで構いません。
参考までに先ほどの動画ではフェーダーの位置がクリーンの方が8dbほど下げられています。ピークメーターでも差が見えます
個人で実験していたときもクリーン側は結構下げ目でも効果は得られましたし、逆に上げすぎるとあからさまな音になってしまいました。

ちなみにDI boxなんて持ってないという方は2回同じフレーズと録ることになりますが効果はあります。
例としてはGreen dayやSum41等はアンプやセッティングを変えて(ハイゲインからクランチ)複数の同じフレーズのトラックを同時に鳴らして分厚い音にしています。
Sum41の「Underclass Hero」やGreen dayの「American Idiot」は結構わかりやすくそんな感じの音なのかなと思います。
Taylor Larson氏とは若干違ったアプローチとなりますが根底の考え方は同じだと思います、確実に効果はあります。


–注意事項–

ここで問題になってくるのが位相(Phase)です。位相とは何かを説明するとそれだけで記事が書けてしまうので、
こちらや他の方々の記事を参考にしてみてください

マルチトラックレコーディングにおける位相問題をおさらいする

ここではクリーンとハイゲインでキャビネットやマイクの位置やEQの設定を変えたりしてしまったときに起こります。
Larson氏も指摘していますがこればっかりは耳を使ってズラすを繰り返してしっくり来る組み合わせを探るしかないのかなと思います。
動画ではクリーンにだけEQかけてるじゃないか!?という風に見えますが、これにも注意が必要で
EQをかけない側のトラックにも設定をコピーして、オフの状態で置く
というとこが必須となります。
※あくまでDAWでBypass状態にするのではなくEQに通した上でプラグイン側のUI上の電源?をオフにする
そうすることでDAW上では同じ処理を二つに施していることになり位相問題が抑えられるそうです。
Larson氏はクリーンのピッキングアタックを際立たせるために3khzあたりを3.7dbくらい広めについてます。


–実例–

文面だけではわかりづらくいまいち効果もピンとこないと思うので今回は
僕の1stEPから〈defunct〉という曲のトラックを使っていきたいと思います。

以下が今回使用したVSTです、ご参考までに。

ハイゲインバッキング

ストンプ:TSE808 2.0 by TSE audio
アンプ:Peavey 5150v4d2 by Vadim taranov (公式サイトでは配布終了?現行では通常の5150の模様)
キャビネット:Pulse IR loader & pulse cab by Rosen digital

クリーン/クランチ

ストンプ:Tubes Creamer 808 Core by Mercuriall Audio
アンプ:JCM800 by Vadim taranov
キャビネット:Pulse IR loader & pluse cab by Rosen digital

使用機材

ギター: lespaul special single cut 2001 by Gibson Nashville
バッファー: Sound Stabilizer vⅡImpedanceSelect by EVA電子
シールド: ANALYSIS PLUS pro yellow oval & Mogami 2534

[サンプル]

まずはこちらがメインのみの音
そしてこちらがクリーンのみ
(今回は少し歪ませてカラッとさせてみました)
最後に二つを混ぜた状態のもの

今回は分かりやすくするためEP収録時より若干クリーンを上げ目で鳴らしています。
派手な違いではありませんがクリーンを混ぜた方が立体感、分離、ピッキングなどがはっきりとしてきているのがわかると思います。
混ぜたものを聞いた後でハイゲインだけ聞くとやはり少しのっぺりしている様に感じるかと思います。
中域も足されているのでメタル特有のドンシャリの嫌な感じも薄れています。
ちなみに動画と同様にクリーン側にだけProQを置きハイゲイン側にはコピーしてオフにしたものを置いてます。


–結果–

自分でやってみてやはり位相には悩まされましたが、クリーンの音を作る時ハイゲインからコピーしてきたキャビネットのセッティングは弄らない
といったことで一先ず解決しました。
しかし、アンプを換えたりEQを派手に弄るとそこでまた僅かですがズレが生まれてしまう事も。
今回なぜか左のクリーンだけパンを振って書き出してしまうミスをしたためか、そいつだけ位相がひっくり返っており合わせるのに少し戸惑いました。

耳で位相合わせる自信があまりないので今回は大雑把に波形を目で見てあわせ、それ以上は目を瞑って先に進めました。
確かなものにしたい人は位相をしっかり合わせればさらに効果が期待できると思います。
この曲は全体的にコード的なプレイが多いのでクリーンは乾いた感じにパリっとしてアタックやハイがしっかり出るのを狙ったのですがまだまだ要研究という感じです。
ちなみに、このEPの二曲目も同じアプローチを取ったのですが、歪ませ過ぎると出にくい7弦の開放音がいい具合にアタックがガッ!と出てくれたのでとてもいい感じに収まりました。

前々からミックスの段階でペラペラになってしまったりコード感やアタックがうまく出し切れなかったり、
ハイを上げれば耳障りになるが抑えるとこもったりシャキッとしきらなかったりでいろいろと悩まされていたので、
個人的にはかなり良い効果が得られました。
副産物的なものとして、ハイゲインはどうしても5,6弦の低音フレーズと高音域の音量差が際立ってしまうのですが、
クリーンの場合、設定によっては高音フレーズにピークが来るので混ぜることにより補い合いほんの少しフラットに近づく効果も得られることが分かりました。

ご意見、ご質問、自分でもやってみた等報告
なんでも結構ですので気軽にコメント欄お使いください。
最後まで目を通して頂きありがとうございます!

P.S.予断ですが上記の「所謂いいハイゲイン」の項目をうまい具合にぼかしつつ条件をクリアしているのがPositive Gridが流行っている理由なのかな?とも…

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