リアンプをせずにリアンプを再現!?○○活用術!!


-導入-

第五回となる今回の更新は、DIやリアンプ機材を使わずに一つのテイクから複数の種類を生成できる方法です。
前に作った音が気に食わなくなったり、少しハイがローが足りないなんて事もしばしばあると思います。
さらには、友人からミックスを頼まれたが弄り辛い音だった、演奏者からもらったデータがオケに馴染まない、
スタジオで録ったものを家に帰って聞いてみると音が好みじゃない、などなど
あまりいい話ではありませんが、誰でも簡単に録音が出来るようになった昨今で珍しくない話かなと思います。

こんな人におススメ

  • リアンプする機材がない
  • もらった録音データが好きになれない、良くない
  • 聞きなおしてみると音が気に入らない
  • マイクを一種しか持っていない
  • 音作りを変えたい
  • 再度別の音、環境、機材で録音しなおす時間も労力もない
  • DIデータを録っていない
  • マルチエフェクターでライン録りをしたが、音を重ねたい

自分の演奏ならまだしも、他人の演奏データだった場合
正直言って挽回するのはなかなか不可能に近いです。
遂に頭がおかしくなったかのようなタイトルですが、大真面目に説明していきますので最後まで目を通してくださるとうれしいです。
ではどのようにしてこの状況を改善するか?

今回はマッチEQを使います


-概要とマッチEQとは?-

マッチEQ

マッチEQとは何か?と言う方もいると思いますので、DTMで困った時でお馴染み
SleepFreaksさんの動画がとても分かりやすいのでそちらをご覧頂ければと思います。
興味のある人は最後まで見ていただけば面白いと思います。

動画でも述べていますが、
理想の音Aと現状の音Bがある時にAを分析してBの音がAに近い鳴り、波形になる様に自動でEQのカーブを描いてくれる
という現代技術様々な機能です。
察しの付いた方もいるかと思いますが、今回はこの機能を使って
手持ちの音BをAにしてリアンプのようなものを再現するという手法です。
※最初に謝っておきますが、正確にはリアンプではありません

概要

それでは本題の此方の動画を見ていきます。

今回もAndrew Wade氏の動画です。人物紹介に関しては第二回の記事を参考にしていただければと思います。
第二回:EQを弄らないローの出し方!○○を混ぜて重みを出そう!

マッチEQの使い方と聞いて真っ先に思いつくのがSleepFreaksさんのように
他人の音をリファレンスとする、バランスを真似る、盗む、参考にする」などなど
あまり創作的、音楽的な使われ方をされていない印象を持つ人が多いのではないでしょうか?
しかしWade氏はこの機能をミックス工程内に入れることでより音楽的に使っています。
説明が多くて分かりづらいのですがこの動画で何をしているかまとめて見ました。

00:38~
まず手持ちのギタートラックが一つしかない、しかもその録り音(手持ちの音B)が大変気に食わない、DIも無い、どうしよう。と言う状況だったとします。
この段階ではキャビIRを読み込ませてもその音にはなりません
02:31~
そこで、自分のギターで同じフレーズを弾いて録音をします。この時にマッチする前のギターとなるべく近いものを使ってください。
シングルかハムか、レスポールかストラトか、アクティブかパッシブか、などなど。恐らく近ければ近いほど精度が上がるということだと思います。
04:48~
録音が完了したら理想の音を作ります。ここではPOD FARMが大好きだったと仮定しています。
07:11~
PODの音(理想の音A)と手持ちの音(B)をマッチして、BをAにしてしまい完了
07:58~
マッチの結果がこちらです。

と言うことをしています。
ここではPC内で録音していますが外部エフェクタ、アンプなどで理想の音が録れる状況ならそれでも問題ないです。

こんな面倒なことをして何のメリットが?という人もいるかと思います。二つほど例を挙げると

例1)
昔やちょっと前に作った音が気に食わなくなるのがギタリストの悲しい特性です。
その際に全トラック録り直しというのはかなり億劫になりますし、下手したらもう弾けない覚えてないなんて事もしばしば。
そんな時に新しいお気に入りの音で数小節だけ弾いてマッチを行うことで、ほぼほぼ解決できるのではと思います。

例2)
いくらライン録りのクオリティが上がったとはいえ、マスターアウトは一つでDIは録音できないの機器が大半です。
物によってはマイクを混ぜることが出来ず一つしか選べないなんてこともあります。
そんな時に、二本目のマイクの音や別の音作りを数小節だけ録音しマッチをすれば、
一つのテイクから複数のマイク、音作りを重ね厚みを出すことが出来ます。

などなど、「音色をコピーできる」という選択肢が増えるだけで可能性はかなり広がるのが分かっていただけたかと思います。


-実例-

今回もやはり、文字列だけでは全く理解し辛い内容なので、実例で詳しく見ています。

さらに自前で用意した音にマッチをかけても信憑性にかけると思いましたので、
今回はCambridge Music Technologyがパラデータを公開している
こちらのサイトから

Jet Bというバンドの’Suit You’のイントロ部分をお借りして作業を進めていきます。
Suit You by Jet Bのパラデータ
(アクセスした際に一番上にあったものを無作為に選びました。)
このの曲となります。

そして今回お借りさせていただいたパラデータのギターの音がこちらになります。

Suit You Gt オリジナルパラデータ

悪くはない音ですが少しこもり気味な音かなという印象です。
ハイがキンキンしていなくて、ミドルも特にローがよく出ている。
マイクにあまり詳しくありませんが、コンデンサマイクを使って録音されたのかな?
と思いました。
そこで今回は「57で録った音があれば、混ぜてよくなるのでは?」
という考えになりました。

以上のことを踏まえて早速工程に移ります。

上のライブ動画でギターは

  • エピフォンのザックワイルドモデルのレスポール
  • アンプはENGLのコンボ

を使用しています。パラデータの特徴的なミドルや印象から見ても、
録音でも同じまたは近い機材を使用しているかなと推測しました。

Wade氏が述べていたとおり、なるべく近い機材を選びます。
今回使用した自分の機材は

  • Guitar: Les Paul special single cut by Gibson Nashville
  • Stomp: Tubes Creamer 808 Core by Mercuriall Audio
  • Amp sim: Le456 by Poulin Amps
  • Cab sim: NadIR by Ignite amps

次に57を使用した何も加工されていないIRを選びました。
個人的に気に入っている、Choptoneから出ているFriedman 412 V30のSM57を使用したIRを選びました。

こちらがそれらを使って自分で弾いた音です。

Suit You Gt まるちゅうver

耳コピが雑だったのでブリッジミュートだったことに気づかず進めてしまいましたが、
そこを除けばかなり57感のある音かなと思います。

ではここからマッチングをしていきます。
今回使用したのはSleepFreaksさんと同じVoxengoのCurve EQというVSTです。
購入すると80ドルですが、無料のデモバージョンでもマッチング機能は問題なく使えます。
マッチの使い方に関しても上の動画で丁寧に説明されているため省かせていただきます。

まず自分の演奏(近づけたい方)を念のため4ループさせてキャプチャし、データを一時的にデスクトップに保存しました。
次にオリジナルのパラデータ(元となり変化させる方)をキャプチャしました。
オリジナル側に挿してあるCurve EQで保存したキャプデータを呼び出し、マッチングさせます。

こちらがその時のCurve EQです


緑がオリジナルパラデータ
赤が自分の演奏です
オレンジの折れ線グラフがマッチEQです
(オリジナルの方の音量を若干上げてあわせておきました。)

このEQ処理を施されたオリジナルのパラデータがこちらです。

オリジナルデータ マッチング後

空気感は出せていないものの、かなり57の音に近づいているのが分かると思います。
同じ環境で57でとった音、と言われても違和感はありません。
ブリッジミュートの箇所も問題なく出来ています。
もし、自分のお気に入りの音があるのであれば、この段階でそれとマッチさせて工程終了となります。

最後にオリジナルのパラデータと混ぜたものがこちら
比較しやすいようにもう一度オリジナルも張っておきます。

Suit You Gt オリジナルパラデータ

オリジナル+マッチング後

元のローやミドルを残しながら57特有のすこし癖のあるハイが混ざり合って、
とてもいい具合になっている印象です。
元データと比べてもキャラクターは全く変わらずに音抜けもラウド感も抜群に良くなっています。
大雑把ですがPC上では二種類のマイクを混ぜていることになり、深みも増しています。
混ぜただけですので一切EQ処理等はしていません。
これなら軽くミックスしてあげるだけで一気に化けそうです。


-メリットとデメリット-

まずデメリットとして

  • 少なくとも数小節は弾き直さなければならない
  • それ故に多少の手間がかかる(ある程度のギタースキルが必要)
  • マッチングをする手間も
  • あくまでも周波数特性をシミュレートしたものでリアンプそのものではない

といったところでしょうか。
リアンプそのものではないという事と、ギタリスト向けのアプローチである事は間違いないです。
ギターのスキルが上がれば上がるほど、手間と時間、面倒さは軽減できると思われます。

メリットとして

  • 一つのテイクから複数のキャビネット、マイキングのシミュレートが可能
  • 全パート録り直す必要がない
  • 実例から分かるように機材面、演奏面でも完全再現する必要はない(ラフで十分)
  • 機材面で多額の投資が要らない
  • ミックスのどの段階でも導入、音色入れ替え?が可能
  • 他人の音を自分が扱いやすい状況に持ってこれる

正直このアプローチは、キャビに何本もマイクを立てられたり、ハイエンドのアンシミュで完成された音を自分で何時でも録れる人にとっては
何のメリットがあるのか分からないかも知れませんが、
低予算、録り直しが出来ない、いい機材がない状況では起死回生が狙えるアプローチです。

他人の演奏、音作りですら実例のように整えてくれるのですから、
自分の演奏、音を自身でマッチする場合、マッチの正確さが格段に上がると思われます。


-まとめ-

今回は二つ目Andrew Wadeのアプローチの一つでしたが、
独学であるWade氏らしい発想とアプローチであると思います。
実際に試してみると、これは本当に素直に感動、感服するしかありませんでした。

一つ問題があるとすれば、デモ版を除いてフリー配布でマッチングが出来るEQプラグインが(自分の知る限り)存在しないことです。
もしあれば、すぐにでも連絡がほしいくらいです
デモ版とIR技術の周波数特性をキャプチャーを利用した完全にフリーで行う手段もあるのですが、
大幅に逸れてしまいますので、別記事で書こうと思います。

実のところ自分も手持ちはProQにマッチ機能があるくらいで他にOzoneやVoxengoのようなマッチングが出来るEQはないので、
実験していてとても欲しくなりました。
なので今回の記事はCurve EQはデモ版を使用しています。
マッチEQとして最初に思いつくのはOzoneですし、さらに正確にマッチングをしてくれるらしいので、これを機に購入を検討したいです。

以上がEQマッチ機能を使った起死回生する方法です。
低予算、弱い録り音は魔改造して駆逐してしまえ!という記事でした。

ご意見、ご質問、自分でもやってみた等報告
なんでも結構ですので気軽にコメント欄お使いください。
最後まで目を通して頂きありがとうございます!

P.S.
Andrew wadeほどの自分のスタジオ持つエンジニアが何故このアプローチをしているかという疑問が出てきますが、
動画内でも述べていますが「極稀にバンドの演奏が使い物にならないレベル」という事故があるそうです、珍しい話でもないのが悲しい所です。
いくらマッチ機能を使おうともタイミングやピッチのずれ、演奏のミスは元に戻りませんので、
そこだけは録音の段階で注意深くチェックしてください。

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